世の中で支持されている方、不況のなか、ビジネスで成功している方は、どんな視点でどんなスキルを身につけ、何を心がけているのか? 次世代リーダーに聞くTHE RULES」人を動かすマナーの法則
活躍している人の「手法」とは?!
お客様や上司とのつきあい、部下の育成、接客、人脈つくり・・・。
ビジネスに欠かせないコミュニケーションには何が必要なのか、考えたことはありませんか?
マナーの語源はギリシャ語でMANUS;手という意味。
このコーナーでは、次世代を担う30~40代の方に、
ビジネスや人付き合いで人と手を取り合うために大切にしていることや、
気付き、ターニングポイントなどをインタビュー。その手法となるマナーを学びます。
(Vol.5 取材・撮影:2010年1月)
米国ルイス&クラーク大学留学。政治科学、国際関係、コミュニケーションを学ぶ。総合広告代理店コピーライター・ディレクター、代議士政策担当秘書、人材派遣会社マナー講師を経て現在、マナー・礼法講師を中心に司会、フードアナリストとして活動中。人の長所・美点を総合的に高めることをコンセプトとし、企業、団体、個人を対象にコンサルティングに基づいた研修を企画。印象マネジメント、接客、ウォーキング、時事解説、食育など幅広く研修を実施中。ハリウッドビューティサロン美人講座講師。(社)全日本着物コンサルタント協会、(財)今日庵 茶道裏千家会員。
E-mail integrace_sato@yahoo.co.jp
法則6:相手の興味をとことん考える
1978年生まれ。東京大学教養学部卒。日本ヒューレット・パッカード株式会社を経て、株式会社ドリームインキュベータに入社。通信・ITサービス・半導体・消費財・小売等の幅広い業界について、新規事業開発、営業組織強化、新技術事業化支援、デューデリジェンス、人事制度構築支援などのプロジェクトに従事。また、ベンチャー企業の社長の傍らで「参謀 兼 執行役」を務める総合インキュベーションにも従事。
「また会いたくなる人に、なる。」には、相手にとっての興味と価値を考え、会話をするのが大切。
佐藤:中川さんは、いつも普段の表情がやさしそうで、話しやすい印象です。コンサルティングのお仕事でどのようなことを心がけていますか。
中川:コンサルティングの仕事は、机上や会議室で完結できると思われがちですが、実態は「外に出て、人に会って、情報を仕入れてナンボ」の世界です。知見を深めるために、クライアントの依頼の有無に関係なく、常に情報に触れていなければなりません。ですから、「インタビュー」はとても大事な仕事です。
佐藤:1回のインタビューで相手にまた会いたいと思ってもらうには?
中川:いくつかのパターンがあると思います。まず挙げられるのが、相手の欲しい情報を提供することです。コンサルティングという仕事柄、多くの業界、多くの企業に接することができるので、他社の事情を紹介すると相手に新鮮な驚きを与えることができます。
相手の方は自分とは別の思考パターンに触れることで、知的好奇心が刺激されるんですね。同じ業界・企業に長くいると、意外と外の情報が入ってこないものですから。
佐藤:常に新しい情報を見つけて引き出しを増やしておくことも大切になってきますね。そして、その情報を相手のニーズに合った提供の仕方をしていくとよいことですね。
中川:情報は、持っていくところによって価値が違う。例えば、カフェで290円のコーヒーは、寒空の下で並んでる人に500円で売れるかもしれない。それと似ていると思います。
自分には当たり前の情報でも、別の人には価値がある場合がある。そのためには、相手が何に興味を持っているかを真剣に聞き、考え、探り当てないといけません。僕自身も修行中の身です。この修行はいつまで経っても終わらないでしょうね。
佐藤:他のパターンはどのようなものですか?
中川:話をしているうちに話し手自身の頭が整理されてくる、というパターンですね。他の業界と比較したり、別の視点を提供することで、自社のことがよりよく見えるようになる。
そのためには、こちらから適切な質問を投げかけないといけないのですが、これがまた難しい
それでも、相手に「中川という人と話をすることで何かを得られた」と思ってもらわないと二度目の面会はありません。
佐藤:相手の立場になり、相手のニーズを引き出す「質問力」を身につけることも大切ということですね。そのためのコツは?
中川:細かいテクニックはいくつもありますよ。答えやすい質問から始めるとか。大きなくくりから入って、徐々に具体的な質問をするとか。相手について事前に情報収集しておくとか。
理想的には、起きている時間は常に「相手への付加価値を考える意識」を持つべきでしょうね。すべての会話が修行の場になりえます。
礼儀正しく第一印象がよいのは、「時間を取って損をした」と思われないための最低条件です。しかし、また会ってもらうにはプラスアルファの付加価値が必要ですよね。
佐藤:そのプラスアルファとは情報の加工をする力と、相手に気付きを与える質問力ですね。
中川:そうです。外部の方に会ってばかりいる仕事を何年も続けて思うことは、「人って、自分が思っていることを的確に話せないものだなあ」ということです。もちろん自分も含めて。「こういうことですよね?」と言い換えたり、視点を変える質問を投げかけると、価値を感じてもらえます。
うちの社内ではしょっちゅうディスカッションをします。
「お前ごときの頭で、独りで考えて分かることなどたかが知れている。いろんな人の話を聞け、もっと議論しろ」と全員が叩き込まれます。人と会話しているときは頭が高速回転しますから。
佐藤:そういえば、私の感性の話をいつもロジカルにまとめてくれて、なるほど、そうだったのかと、自分で自分に気付かなかったことを気付かせてくれて、感動します。
中川:価値を感じてもらえて何よりです。(笑)
佐藤:仕事では常に自分の価値をあげようと考えているのですか?
中川:自分の価値は相手が決めるものです。自分のモチベーションを上げるために知的好奇心は重要だけど、最終的にはまわりに認められないと意味がない。自分の考えることをどうアウトプットするかを真剣に考えるようになりました。
佐藤:自分の価値を自分で判断できるといいのですが、ビジネスではやはり、他人が判断するので、他人視点が必要になりますよね。
中川:自分がすごい発見だと思っても、相手が何に興味があるか、どう伝えれば理解してもらえるか、という視点が出発点にならないと、最終的に意味がないアウトプットができあがるんですね。
僕は前職で、システムエンジニアでしたので、あらかじめ合意した仕様どおりに動くものを作る、という仕事でした。
そんな仕事から今の仕事に変わり、苦労したのが「相手視点への転換」でした。今でも修行中です。
「まかせて安心」な人になるには
佐藤:中川さんは、「まかせて安心」な安心感あります。安心感を与えるために心がけていることなどありますか?
中川:任されたら完遂する、という執念でしょうか。(笑)
ちょっと話はずれますが、打たれ強い、前向き、とよく言われますね。精神的・体力的にきつい業界のためか、経験のある人たちもけっこう辞めていきます。結局今、自分が残っている最大の理由は何かというと「打たれ強さ」なのかなと思います。
佐藤:キャリアのビジョンを持ち、長期的に考え、何事も前向きに捉えるということですね。そういえば、怒るイメージがありません。
中川:うーん、結構怒ったりするんですけどね(笑)。新人のころから、幸か不幸か口調のきつい上司が多くて、叱るのも叱られるのも慣れてしまったのかもしれません。
佐藤:いつも、ニコニコしている印象です。初対面から話しやすいと言われませんか?
中川:ありがとうございます。実はときどき言われます(笑)。
あるベンチャーの社長がこんなことを教えてくれました。「経営では、社員が都合の悪い情報を抱えないで、経営者である自分に言ってくれるかどうかが重要だ。言い換えると、経営者は、悪い情報でもインプットしてもらえる人間かどうかが問われる。中川君はそういう面でチームを率いるのに向いているのではないか」
日々最前線で戦っている社長からこの言葉をいただいて、本当に嬉しかったのを覚えています。
佐藤:悪い報告をしても、応えてくれそうな気にさせることは重要ですね。
中川:「悪い情報を報告してくれるのは、頼られている証拠」と思っています。勘違いかも知れませんが(笑)。だから、報告してくれた人に「何やってるんだ!」と怒らずに、「いっちょ一緒に解決してやるか」とむしろ闘志がわいてくる。その態度が伝わっているからでしょうか。
相手が否定的でも、前向きな内容に自分のなかで変換して、相手をポジティブにさせる
佐藤:人に話を聞く上で、心がけていることは?
中川:基本的に前向きに話すようにしています。
例えば、ある素材の市場化支援をしたときのことです。「この素材を、貴社の商品に混ぜたら、こんな効能が謳えます」と説明し、製品化のポテンシャルを測る。
その際に、相手からネガティブな反応があるのは当たり前です。
「商品化には少なくとも3年はかかりますね。○○の認可もとらないといけないですし・・・」とか、「○○のデータがないとどうにもなりません」とか。
佐藤:それで引き下がったら、ビジネスになりませんよね。
中川:その通りです。
ネガティブな状態で、理由を聞くとハードルの一部しか洗い出せない。相手にも「この素材は駄目だな」という印象を与えてしまう。
そこでポジティブな言い換えが必要になります。
例えば、「3年後の商品化に向けて、○○の認可以外に超えるべきハードルは何でしょう?」とか、「2年後に○○のデータを揃えられたとしたら、採用の可能性がある、ということですね?」と切り返す。
これを繰り返すと、段々相手もポジティブになってくる。こちらも、ハードルをきちんと認識できる。
どうやって客観的に整理し、真実に迫るか。インタビュアーの腕の見せ所ですね。
佐藤:話し方で気をつけていることは?
中川:常に明るく、声は大きめに、前のめりに話すようにしています。「口ほどに物を言い」ますからね。
佐藤:態度や話し方のマナーはもちろん、気持ちがあれば自然に態度に表れて伝わるということですね。ビジネスでは、常に自分の価値を高めながら相手に価値を提供する心がけが大切ということがよくわかりました。ありがとうございました。
価値を感じさせる情報力と質問力を磨く編
初対面の場合は特に、相手に話をすることで何かを得られたと思ってもらわないと二度目の面会はないという心づもりが必要です。
例えば、メーカーの方と人事制度の話をしているとします。「企画部門や営業部門などでどういうインセンティブをつけているか」、という話を聞く一方で、中川さんは、こちらから同業他社の事例を話したりするそうです。
さらに、「コンサルタントやクリエイターを抱える企業はどのようなインセンティブ制度を持っているか」というまったく別の業界の話を質問することもあるそうです。すると、インセンティブ制度という単なるルールの話から、「自分たちの会社のインセンティブ制度は、社員のどのような行動を促進しているか」、「会社として、どの階層・部門の人材を厚くしたいと考えているか」という人材戦略の視点で見られるようになります。問題点が見えてくる場合も。「うちのインセンティブ制度は、仲間同士が協力するのを妨げているかもしれない・・・」といった気づきを与えることにつながります。
情報を資源として考え、常に引き出しを増やし、効果的な質問を心がけ、自分の付加価値を高めることが大切です。